私の愛しいアップルパイへ
調子がよいときにはよい習慣も継続できるけれど、忙しいときやいざというときに習慣が継続できないという悩みは尽きないでしょう。
習慣は継続によって成果が積み重なります。調子がよいときだけ続けられる習慣というのは、成果が安定しないということです。そのうえ、よい調子というのも得てして長くは続かなかったりするものです。
少し人と口論したとか、今月お金を使いすぎたとか、長時間の会議で疲れてしまったなどちょっとしたことでよい調子が台なしになることもあります。しかも、多くのケースが自分ではどうしようもない要因であったりするものです。
そうなると、よい調子をどれだけ維持できるかより、調子がイマイチでもよい習慣に手をつけられる、継続できるようになる道を探すほうが根本的な解決になります。
そのようなことは可能なのでしょうか。はい、その鍵は「自己コントロール感」にあります。
やる気や意志力は使いたいときに使えるとは限らない
やる気やモチベーションを高めたり、あるいは意志力を発揮できたりすると習慣の継続を強く後押してくれます。難しい状況ないしつらい状況でも行動できる力を得られます。
問題は、そのような意志力ややる気というものは発揮したいときに発揮できるとは限らないことです。
やる気や意志力はたまにお金や筋肉にたとえられることがあります。それは根本的な誤解です。やる気や意志力はそれらと違って使いたいときに自由に使えるとは限らない点で決定的に質が異なるのですから。
やらなければいけないと強く感じているにもかかわらず行動できないことも多々あるでしょう。当たり前のようにできていたことがある日突然できなくなることもあるでしょう。苦しい出来事や悲しい出来事を体験した後のような困難な状況においては、意志力を発揮するのは特に難しいものです。
行動する十分な理由や目標があっても行動するのは難しいものです。
一方で、思いもしなかった時に驚くほど行動力が湧いてくることもあります。冒険野郎マクガイバーみたいに困難をバネにそれまで以上に力を発揮できることもあります。
意志力を発揮する鍵は自己コントロール感にある
どうすれば難しい状況であっても継続的に意志力を発揮できるようになるのでしょうか。その鍵は「自己コントロール感」にあります。
自分で状況を制御できているという“感覚“がやる気やモチベーションを高め、継続的な意志力の発揮を可能とするのです。
ものごとを自己コントロールできている感覚を持っていると、意志力を維持しやすいです。逆に、ただ命令にしたがっているだけなど自分の意思がまったく反映されていないと感じる場合には意志力を消耗するスピードがはるかに速いことが研究でも分かっています。1
自分で状況をコントロールできている感覚。ここにハッキングできるバックドアが隠されています。
なぜなら、実際に状況をどの程度制御できているかはさほど大きな問題ではないからです。「制御」というのは非常に曖昧な概念です。考え方ひとつでどうとでもとれるものでもあります。
事実ではなく「感覚」を持っていることが大切なのです。つまり、どんなささいなことでもよいのでそのような感覚、「自己コントロール感」をはぐくむタスクに継続的に取り組んでおくことが大事ということです。
では「自己コントロール感」を作り出すタスクとは何かというと、実はなんでもよいのです。対象がなんであれ、自分で決めたことができたと感じられれば、自己コントロール感を育成できます。靴を綺麗に並べるといった極めて簡単な行動でも機能します。
大切なのは難易度ではなく、小さな勝利を積み重ねることです。
これは様々なタスク管理や時間管理、自己啓発本などにたびたび登場する方法でもあります。
7つの習慣は主体性を発揮する方法として、「自分と約束をして、それを守ること」と表現しました。2
マニャーナの法則では「ファーストタスク」という考え方でそれを表しています。3
方法はなんであれ、自分で決めたことができたと感じられる機会を増やし、自己コントロール感を高めることです。結果的にそれが他のあらゆるタスクや習慣の実行によい影響をもたらします。
貴下の従順なる下僕 松崎より