報酬を期待する欲求こそが人を習慣へと駆り立てる

報酬を期待する欲求こそが人を習慣へと駆り立てる 習慣化のコツ

私の愛しいアップルパイへ

習慣ループにおいて報酬と欲求は違います。報酬は満足であり、欲求は期待です。

何かを期待する欲求を報酬が満足させます。欲求は行動の前に起こり、報酬は行動の後に起こります。

少々混同されがちな報酬と欲求ですが、その働きは大きく異なります。

報酬を期待する欲求こそが人を習慣へと駆り立てる

簡単に言えば報酬を期待する欲求はドーパミンが重要な役割を担っており、報酬に満足するのは「体内のモルヒネ」とも呼ばれるエンドルフィンが重要な役割を担っています。

ただし、欲求や報酬は脳の複雑なメカニズムが相互作用しあって働いているうえ、まだまだ未知の部分も多いので単純な説明はできないことに注意してください。

ラットのドーパミン放出を阻害すると生きる意欲をすっかり失ってしまいます。食事も交尾もしなくなってしまいます。しかし、ドーパミン放出を阻害したあとでも砂糖水を与えると変わらず喜びを感じます。1

つまり、報酬に満足する能力があっても欲求が生まれなければ行動しなくなってしまうのです。

逆にドーパミンを注入すると報酬を用意しなくともラットは報酬を求めて狂ったように行動します。

そのうえ、報酬を確実に得られるか分からないときの方が欲求は高まるのです。レバーを押すと餌が出てくる実験では、3〜7割の確率でときどき餌が出てくるようにすると、ラットがレバーを押す回数は一番多かったそうです。2

何か思い当たることはないでしょうか。

そうです、人間も同じメカニズムを備えています。食事やお金、承認、新しい情報といった満足できる経験そのものよりも、それらに対する期待が報酬中枢を行動に駆り立てます。それを得られるかどうかが不確実なら完璧です。

だから定期的に一定のお金がもらえるよりも、長期的には損するにもかかわらず、もしかしたら稼げるのではと期待させてくれるギャンブルに中毒となるわけです。

SNSの通知画面をチェックしているとき以上に、通知音が鳴った時の方がワクワクするのも同じ現象です。「大事な通知かな」と感じている時に最も期待が高まるからです。

こちらの記事でも取り上げたスキナーの「4つの部分強化スケジュール」でいう「変動比率スケジュール」です。

実際に報酬を得る前に、報酬が何か分かる前に、自分が何を期待しているかが見えてくると習慣攻略へ大きく前身できたことになります。

貴下の従順なる下僕 松崎より

参考文献

  1. ジェームズ・クリアー and 牛原眞弓, “ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣,” パンローリング株式会社, Oct. 12, 2019.
  2. アンデシュ・ハンセン and 久山葉子, “スマホ脳,” 新潮新書, Nov. 18, 2020.