習慣に必要なのは報酬

習慣化のコツ

私の愛しいアップルパイへ

前回の記事で問題提起したとおり、やりたいことがなぜ続かないのか、それを乗り越えるにはどうすればいいかを連載形式でお話していきます。

それでは『「やりたいこと」なのに続かない、という人のための習慣化講座』の内容を紐解きながら、習慣化の冒険へと旅立つことにしましょう。

まずもってお伝えしておくべきは習慣と報酬の関係についてです。これは講座の前半部における主要なテーマでした。

習慣に必要なのは報酬(情熱ではなく)

習慣化に必要なのは徹頭徹尾「報酬」です。これを理解し、受け入れなければ習慣を攻略するのは難しいでしょう。

実は、「やりたいことが続かない」というのは当たり前のことです。それは、習慣はやりたいという気持ちで行動に移せるものではなく、報酬があるから行動に移せるものだからです。

一定間隔で満足できる報酬を得られさえすれば、人はスキナー箱に入った鼠のように行動を繰り返すようになります。

バラス・フレデリック・スキナー(Burrhus Frederic Skinner)はオペラント条件付けの研究において、報酬がいかに行動を繰り返させるかを「強化スケジュール」としてまとめました。

強化スケジュールとは、どのような間隔で報酬(強化子)を与えると行動が強化されるかを導き出したものです。代表的なものには次の4つの「部分強化スケジュール」があります。

  • 固定比率スケジュール(FR:Fixed Ratio)
  • 変動比率スケジュール(VR:Variable Ratio)
  • 固定間隔スケジュール(FI:Fixed Interval)
  • 変動間隔スケジュール(VI:Variable Interval)

中でも変動比率スケジュールは報酬の量が毎回ランダムに変動するもので、特に行動の繰り返しを強化することで知られています。このスケジュールはスロットやパチンコなどのギャンブルに利用されています(これがいかに退屈極まりない苦行に等しいゲームへ、数え切れないほどの人を駆り立てているかはご存じのとおりです)。

報酬があれば好きなことどころか嫌いなことでも習慣化できます。たとえば、会社に行くのが好きでなくとも、給料のような報酬があればそれ(通勤や労働など)を繰り返せるわけです。

お金には世間の認める客観的な価値があり、それを得る過程で経験する苦痛よりも価値ある報酬として認識されていために、嫌な仕事も続けられるわけです。

つまりはやりたいというモチベーションがなくても半自動的に繰り返せることこそ習慣の力なのであり、「やりたいことを続けられる」というのはある意味では矛盾を含んだセンテンスです。

これは少々直感に反する部分があります。私たちは幼少より自分の意思で、自分の考えで、自分の気持ちにしたがって行動することを是とするよう教わってきたのですから。

だからこそ「やりたいことを続けること」が何の苦もなく、障害もないものだと勘違いしてしまいがちなのです。そして容易にやりたいことが続けられないという迷宮にはまり込んでしまいます。

やりたいことがなぜ報酬にならないのかについては次の記事でさらに詳しく取り上げ得る予定ですが、まずは行動を継続して習慣化するには報酬が必要であるということをご理解いただくことが第一歩になります。そして、「やりたい」という気持ちは報酬になりがたいと知ることです。

貴下の従順なる下僕 松崎より