タスク管理やタスクシュートを広めたい理由

タスクシュート時間術

私の愛しいアップルパイへ

2011年にjMatsuzaki個人ブログを開設して以来、10年に渡ってタスク管理やタスクシュートを広める活動をしてきました。自ら開発したTaskChute Cloudは5周年を迎えました。

タスク管理やタスクシュートをなぜ広めたいのか。これらを通して私は人に何を伝えたいのかについて今日はお話します。

私にとってこの活動の中心にあるのは次の4つのことに集約されます。

  • 重要なことを見極める
  • 集中力を取り戻す
  • 習慣化して積み重ねる
  • 結果、偉大な仕事を成す

重要なことを見極める

現代ほど「集中」が貴重な時代はなかったでしょう。人は情報を得る代わりに、集中を失ったようです。

自分にとって重要なことを見極め、それに集中することが今ほど難しい時代はかつてなかったでしょう。

集中すべき対象が余りに多すぎるのでしょう。インターネットの登場によって文字どおり時間と場所を問わず双方向通信が可能になったことで、人は有象無象のタスクに埋もれる結果となったのです。

24時間手軽に仕事上の連絡ができるようになりました。家に居てリモートで仕事ができるようになりました。インターネット越しにインプットが大量に得られるようになりました。

このような状況においては、仕事を広げるのは簡単であり、絞り込むのは難しいものです。しかも大抵の場合、ある出来事が重要であったか否かは実行後に分かってくるのです。これを頭の中だけ考えようとすればすぐにパンクしてしまうでしょう。

重要なことはあとから分かります。であるならば、自分にとって何が重要なのかは、自分が何をしてその結果どうなったかをつぶさに観察する必要があります。タスクシュートは行動ログとその評価を通してこれをサポートしてくれます。

「TaskChute Cloud」で「マニャーナの法則」に徹底的に基づいてタスクを処理した1分単位の行動ログを晒す 7
TaskChute Cloudの行動ログ
タスクシュート時間術でタスク実行後のコメントを活用する
タスクごとの事後評価

集中力を取り戻す

悪いニュースは続きます。集中を遮るものが増えただけでなく、その巧妙さも増すばかりです。これはインターネットの一般化に加えて、スマートフォンが登場したことで決定的になりました。

スマートフォンの向こう側では、文字どおり一流の企業が一流の人材を雇い、多大な資金を投じて我々の注意を引こうとしているのです。ニーチェ風に言えば「スマートフォンをのぞく時、スマートフォンもまたこちらをのぞいているのだ」というわけです。

これに抵抗するのはひどく難しいことです。ゴリアテと戦うようなものです。

スマートフォンは我々にとって余りにも魅力的に映ります。ドーパミンがハッキングされるので集中が乱されるだけではなく、不安を覚えやすくなります。いくつかの研究結果によればうつ病を発症する直接的な原因にもなると言います。123

不安なく目の前の1つのことに集中することは、貴重な贅沢になりつつあるのです。

タスクシュートは今日やることをクローズリスト化、つまり今日やることだけを1つのページへ実行順に書き出すことで、目の前のことに集中するサポートをしてくれます。

TaskChute Cloudの考え方
今日やることだけを1ページに実行順で並べる

習慣化して積み重ねる

生活の質を上げるにあたって、習慣は避けて通れない道です。

我々に求められる仕事はますます複雑な思考と技術が必要とされるようになっており、どれも1日で終わるような仕事ではなくなっています。さらには、いまや知識や技術は簡単に陳腐化してしまうので、継続的に腕を磨いていく必要があります。

こういった状況においては、重要な仕事に集中することを習慣として積み重ねる必要があります。長期に渡る活動と継続的な努力が求められるので、意志力でどうにかできるものではありません。

タスクシュートは行動ログにもとづいて現実的なルーチンを未来に生成できるので、重要な仕事を無理なくルーチン化することで習慣育成をサポートしてくれます。

デスクトップ版:TaskChute Cloudタスク画面の操作方法7
行動ログから未来のルーチンを設定して習慣化する

結果、偉大な仕事を成す

重要なことを見極め、それに集中し、習慣として継続するということです。その結果、自分にとって偉大な仕事のために自分を使えるということです。

これは自らが偉大と認める目的のために自分自身を使う生き方です。これこそが仕事の範囲にとどまらず人生全体の幸福にもつながるものでしょう。

これはGeorge Bernard Shaw(ジョージ・バーナード・ショー)の言葉に強く感化されたものです。1903年、ショーは人生の真なる喜びについてこう語りました。

これはショーがArthur Bingham Walkley(アーサー・ビンガム・ウォルクリー)へ宛てた書簡の一部であり、「Man and Superman」の序文として掲載されているものです。4

This is the true joy in life, being used for a purpose recognized by yourself as a mighty one.

人生における真の喜びとは、自らが偉大と認める目的のために、自分自身を使うことである

なお、この文章はこう続きます。

Being a force of nature instead of a feverish, selfish little clod of ailments and grievances, complaining that the world will not devote itself to making you happy. I am of the opinion that my life belongs to the whole community and as long as I live, it is my privilege to do for it what I can. I want to be thoroughly used up when I die, for the harder I work, the more I live. I rejoice in life for its own sake. Life is no brief candle to me. It is a sort of splendid torch which I have got hold of for the moment and I want to make it burn as brightly as possible before handing it on to future generations.

世界が自分を幸せにしてくれないなどと嘆くような、不平不満を訴える利己的な小さな塊としてではなく、自然の一部になることである。私は自分の人生は社会全体のものであり、自分が生きている限り、社会のためにできることをするのは自分の特権だと考えている。私は、死ぬときには徹底的に自分を使い果たしたいと思っている。なぜなら、一生懸命働けば働くほど、生きることができるからである。私は働くことそれ自体によって人生から喜びを得る。私にとって人生とは儚く消え去るロウソクではない。私にとって人生とは短いロウソクではなく、私が偶然にも手にしたすばらしい松明であり、それをできる限り明るく燃やしてから後世の人々に手渡すのである。

タスクシュートはこのような幸福を醸成するために役立つでしょう。これを広めることは、私にとって最も意義深い仕事のうちの1つです。

貴下の従順なる下僕 松崎より

参考文献

  1. アンデシュ・ハンセン and 久山葉子, スマホ脳, 新潮新書, Nov. 18, 2020.
  2. Philip Zimbardo, Philip Zimbardo: The demise of guys?, TED Talk, 2011.
  3. ゲーリー・ウィルソン and 山形浩生, インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学, DU BOOKS, Mar. 31, 2021.
  4. George Bernard Shaw, Man and Superman – Epistle Dedicatory To Arthur Bingham Walkley, 1903.