なぜタスクをすべて書き出すと失敗するのか?

なぜタスクをすべて書き出すとうまくいかなくなるのか? 1 タスクシュート時間術

私の愛しいアップルパイへ

タスク管理において、気になることをすべて書き出して細分化するアプローチは広く支持されています。いまや12月に入ったらグリューワインを飲むのと同じようなゴールデンルールになりつつあります。

しかし、このアプローチは実際に取り組んでみると思ったよりうまくいかないことに気付きます。うまく実行できないどころか、より多くの混沌をもたらすことすらあります。

タスクをすべて洗い出すアプローチは失敗するというのが今の私の結論です。なぜか?思慮深いあなたならそう質問してくれると信じてました。

まずはその理由をついて詳しくお話し、それから現実的な解決策について雉が羽繕いするがごとくじっくり丁寧に説明していきます。

タスクをすべて書き出して失敗する典型的なパターン

なぜタスクをすべて書き出すとうまくいかなくなるのか? 2

タスクをすべて書き出して、可能な限り細分化するというメソッドをまじめに取り組めば、大体半年、早ければ2〜3ヵ月で破綻し始めるのではないでしょうか。

タスクをすべて洗い出そうとすれば、いずれ実行できないほどタスクリストが肥大化します。それもそのはず、タスクを実行するよりも、タスクを思い付く速度の方が速いからです。

タスクリストは情報の更新が重要です。時間の経過とともにタスクリストはどんどん肥大化していくので、肥大化したタスクリストのメンテナンスにはなお時間がかかります。いずれ、”水のような心”とはほど遠くなる状態になります。オーマイゴッシュ!

しかも、肥大化したタスクリストはタスクに取り組むハードルを上げます。判断を迷わせるからです。

すると、タスクリストにすべてを書き出したけれど、まさにその理由によってタスクに取り組むのが億劫になってくるわけです。なんたる皮肉でしょうか。ユゴーだってこんな皮肉を思いつきやしなかったでしょう。

皮肉なことにささいなことまで気になることとしてタスクリストへ書き出してしまったので、タスクリストから逃避したいときに残っていることはほとんどありません。

結局、そうなるとタスクリストに書かれていないような、本当に無意味な脱線にばかり時間を使うようになるでしょう。

こうしてタスクリストが管理不能に陥ると、今度はツールが自分にあっていない気がしてきます。

幸い世の中には無数のタスク管理ツールがありますから、似たような新しいツールを探して移行すれば暇つぶしになりますし、しかもリストが一時的にクリアされるので少し気分が良くなります。こうしてタスク管理ツールジプシーが誕生します。

しかし、そもそもの考え方が変わらないので結局は同じことを繰り返す羽目になります。自分に合ったツールという幻想を求めて、定期的に「良いツール」を求めて彷徨うわけです。シーシュポスの神話はきっとこの事象を題材として書かれたに違いありません。

タスクを漏れなく書き出すのはシンプルに非効率

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かつてはタスクをすべて書き出し、細分化するアプローチもうまくいったのでしょう。しかし今では機能不全への入口になります。

席替えやプリンタの修理、必要書類の郵送や今日の買い物のように、見通しが立ちやすく定型化しやすい仕事であれば問題ありません。最適なアプローチにすらなるでしょう。

しかし、資料作成や研究結果のまとめ、新しいサービスの企画などのように複雑で創造性の高い仕事には向いていません。そして、後者こそ効果的な管理が必要な重要タスクではないでしょうか。

このような複雑で定型化が難しく、創造的な仕事ではタスクをすべて終わらせられないことが前提となります。

単純労働ではなく「考えること」が仕事の多くを占めるようになったことで、以前ほど仕事の範囲が明確でなくなり、極めて曖昧で予測不可能なものとなりました。目標はより抽象的になり、日々方向性を微調整しながら働く必要があります。やったほうがよいことは波のように押し寄せてきます。

仕事の完了は非常に曖昧な概念となりました。1日で実行すべきノルマのようなものもなく、1つのタスクを完了したら1つ以上のタスクが新たに生まれるのが常です。プロジェクトの完了は、次なるプロジェクトのスタートとなります。

このような状況下でタスクをすべて漏れなく書き出そうとすれば、必然的にタスクリストは肥大化を続けます。タスクはどこまでも増やすことができますし、1つのタスクをどこまでも細分化できてしまうからです。

肥大化するどころか、展開が予測不可能な仕事では漏れなく書き出したタスクがまったく使い物にならなくなることもしばしばあります。状況が変化すれば、見通しもまた変わるからです。

結果、タスクリストの中でも重要度の高い20%程度のタスクだけに動きがあり、残りの80%は手がつけられないままタスクリストの底で滞留することになります。

いつ使うともしれない重要度の低い残り80%のタスクをせっせと書き出し、細分化し、定期的に分類と整理を続けるのはシンプルに非効率です。このようなことに脳内リソースを割いたり振り回されたりするのは、あなたのようなエレンガントな方には不適切です。

不要なタスクを含む長大なリストをメンテナンスするのはストレスフル

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もちろんデジタルツールであれば重要度や担当者に応じてリストをフィルタリングするともできますが、同じバケツに80%も手付かずのタスクが掲載されているので、無駄なメンテナンス負荷がかかります。

結局、同じリストにある以上は視界に入りますし、進捗やステータスの更新などをし続けることになります。タスクの抜け漏れを防止するためにリストへ書き出したわけですから、リストからタスクを消すこともままなりません。このアプローチでは、タスクの削除はタスクの実行漏れにつながることを暗に示すからです。

リストをメンテナンスする度に実行目処がたたない、いつまでも着手されることのないタスクばかり並んだ長大なタスクリストを眺めるのはストレス以外の何物でもありません。

これもすべてのタスクを終えられる前提であれば十分に意味があります。いずれはすべて実行されるならタスクとしてすべて書き残しておくべきでしょう。あとは順番の問題だけです。

しかし、見通しと手順が明確でかつタスクをすべて終えられる前提でなければ、タスクをすべて書き出して細分化するアプローチは遅かれ早かれ機能不全に陥ります。

これがタスクをすべて書き出し、細分化するタスク管理メソッドの欠陥です。長くなってきたので解決編へと入る前にポイントをまとめておきましょう。

  1. タスクをすべて書き出そうとするとタスクリストが肥大化する
  2. なぜなら、すべてのタスクを終わらせることはできないから
  3. 書き出されたタスクの中でも動きがあるのは重要な20%程度のタスクのみ
  4. 大半のタスクは手がつけられないままタスクリストの底で滞留する
  5. 着手されることのないタスクを含んだ長大なリストをメンテナンスするのはストレスフル
  6. 肥大化したタスクリストのメンテナンスには時間がかかり、やがて管理不能となる

次回はTaskChute Cloudがこれをどのように解決しているのかをお話していきます。

貴下の従順なる下僕 松崎より