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習慣化においてやりたいことを習慣化したいと考えることは陥りがちな罠です。しかし、やりたいことは報酬にはならないとビジネス書作家の佐々木正悟さんは言います。1
習慣というのおは、その行動は好きだから繰り返すのでも、やりたいから繰り返すのでもありません。報酬があるから繰り返すのです。
これは直感に反しますし、およそ受け入れがたい事実でしょう。しかし、これを受け入れなければ、やりたいことが続かないという迷宮から抜け出すことはできません。
今回はやりたいことがなぜ報酬にならないかについて、佐々木正悟さんの講座を紐解きながら解説していきます。
理想の空想はむしろ行動を鈍らせる
「こんなことがやれたらいいなぁ」「これができたらいいのに」「こんな風にやれたら理想だ」と空想することは、行動を繰り返す上ではさほど役に立ちません。むしろ行動を鈍らせることすらあります。
人は妄想と現実を見分けることが不得意です。夢や理想を空想すると望みのものを手に入れたと勘違いして、努力でなくリラックスしてしまうからです。
空想と期待は違います。「空想」とは将来のイメージで、「期待」は目標を達成できるかです。
ネガティブな空想をもち、ポジティブな期待をもつことは目標達成を促進します。「もっと事態が悪化しそう。でもきっとうまくいく!」と考えることです。
しかし、ポジティブな空想をもち、ネガティブな期待をもっていると事態を悪化させやすいです。「もっとよくなるはず! でもうまくいかないかな」と考えることです。
Gabriele Oettingen(ガブリエル・エッティンゲン)博士はダイエットに取り組む人々を対象にこれを実験しました。結果、ダイエットした後のポジティブなイメージを抱き続けていた人より、ネガティブなイメージを抱き続けていた人の方がダイエットに成功できたのです。2
やりたいことは報酬にならない
では、やりたいことを習慣にしたいならどうすればいいのでしょうか。
行動を繰り返すために必要なのは空想ではなく、徹頭徹尾「報酬」です。
やりたいことは、ただそれだけでは報酬にはなりません。なぜなら、やりたいことは未来の空想にすぎないが、報酬は常に今得られるものである必要があるからです。
たとえば「成長したい」は未来の空想にすぎないので報酬にはなりがたいものです。自己成長の類のもの、「人生哲学に沿う」とか「理想をイメージする」なども同様です。
もっと身体的な感覚を伴うような、即時的な満足を伴うものにする必要があります。
やりたいことと同じく、楽しいことも習慣化は難しいものです。楽しいという感情は報酬にはなり得るものの、長いプロセスの最後に得られることが多いためです。
たとえば作曲が楽しいとしても、その報酬を強く得られるのは作品が完成したときや区切りのよいときであることが多いです。つまり達成感というやつです。それは遠い(未来の)報酬であるため、それだけで行動を続けるのは難しいでしょう。
楽しいという感情や達成感を報酬とする場合、むしろ制作中は楽しいとは反対の感情である面倒くささやしんどさといった正反対の感情とたびたび向き合うことになります。面倒な単純作業や「こんなんじゃダメだ」といった葛藤を経験しなければならないでしょう。これによって、楽しさを報酬とすることは一層難しくなります。
つまりやりたいことを習慣にしたいのなら、繰り返したくなる報酬を別に用意することです。簡単な例を挙げるなら、コーヒーを飲みながら作業するとか、会話を楽しみながらセッション形式で作業するといった風にです。そういった即時的に得られて定間隔でやってくる報酬を用意するのです。
まとめましょう。
- 理想を空想することに頼らない
- 行動の繰り返しに必要なのは報酬
- やりたいことに即時的な報酬を用意する
次回以降の記事では、やりたいことの報酬設定についてみていきます。
貴下の従順なる下僕 松崎より