このページではチャールズ・デュヒッグ著の「習慣の力(原題)The POWER of HABIT」について、まとめていきます。
本書は2012年に出版され、その後の多くの習慣化本に影響を与えました。
なぜならこの本が初めて習慣のメカニズムを上手く言語化したからです。
このページでは、「習慣の力(The POWER of HABIT)」の中でも最重要項目と思われる「習慣のメカニズム」に絞って紹介します。
習慣のメカニズム
著者のチャールズ・デュヒッグは、習慣を3段階のループで表現しています。それを端的に表したのが以下の画像です。
この画像を見ると、「きっかけ → ルーチン → 報酬」というループがあり、その中心に欲求があることが分かりますね。
このループの結びつきが強くなるほど、きっかけの段階で強い欲求が生まれるとされています。
たとえば、喫煙者の視界にタバコが入ってきたことをきっかけに、脳がニコチンという報酬を期待し始めます。
この期待こそが”欲求”と呼ばれるものです。欲求は「習慣ループを回す原動力になっているもの」と言えるでしょう。
ここでニコチンが得られないと欲求は膨れ上がり、それが抑えきれなくなると、喫煙者はタバコに手を伸ばすというルーチン行動を起こしてしまいます。
きっかけを見た瞬間に欲求が生まれ、無意識のうちにルーチン行動を取る。これが習慣のメカニズムです。
習慣を生み出すためのカギ
上記のきっかけと欲求を見事に結びつけた「歯磨き粉」の事例を紹介しましょう。
現在普及している歯磨き粉は、ミント入りで、口がスッキリする感覚がありますよね。
その原点となったのが「ペプソデント」という歯磨き粉でした。
クロード・ホプキンス氏は、このペプソデントを売ることが至上命題の広告マンです。
ホプキンスは消費者に売るために、歯磨き粉の「毎日の使用」を納得してもらうきっかけが必要だと考えました。
そのときにひらめいたのが「歯を舌で触ってみてください」というキャッチコピーです。
実際に歯を舌で触ってみると、なにか”膜“のようなものを感じませんか?
ホプキンスは「この膜があなたの歯を曇らせているのです」と宣伝すると同時に、美女たちがほほえんで美しい歯を輝かせているポスターを街中に貼り出しました。「ペプシデントがその膜を剥がし、あなたを美しくします」と。
結果としてペプソデントは、当時の歯磨き粉市場を独占するほどの売上を叩き出しています。
ここまで見てきて、習慣化のカギは以下にあることが分かります。
- 膜という、シンプルでわかりやすいきっかけを見つけること
- 美しい歯という、具体的な報酬を設定すること
ただ、カギはこれだけではありません。
ペプソデントは世界で初めてのミント入りの歯磨き粉だったのです。
ペプソデントを使い続けることで、消費者はミントがもたらす「ひりひりした刺激」をだんだんと求めるようになりました。
逆にこのひりひりした刺激がないと、「歯がキレイになった気がしない」もしくは「口の中が物足りない」感覚を覚えました。
ここからいえる教訓は、消費者にはその製品が効いているという、何らかのシグナルが必要だったということです。
この最後のカギ「欲求を生み出す」ことに成功したため、ペプソデントは大成功を収めたのです。
感想
ここからは感想です。
本書は次のような内容で構成されています。
- 第1部:個人の習慣
- 第2部:企業の習慣
- 第3部:社会の習慣
上記の習慣ループは第1部で紹介されている内容でした。
この習慣ループですが、ほかの習慣化本でさまざまなメソッドを学んでも、抽象化すればほとんどが「きっかけ → ルーチン → 報酬」+欲求 というループで説明できることに気づきました。
ほかに「習慣の力(The POWER of HABIT)」がユニークな点は、「企業の習慣」や「社会の習慣」を変えるにはどうしたらいいか、という内容が書かれている点だと思います。
個人が適応するにはむずかしい点もありますが、組織のトップに立つ人であれば一読の価値はあるのではないでしょうか。
習慣を学びたい初心者に勧めるかと言われればNoですが、習慣について詳しく研究したい人にとってはおすすめできる一冊です。