私の愛しいアップルパイへ
タスク管理は仕事効率化の文脈で語られることが多いです。特に、目の前にある仕事を「より多く、より速く」実行するための方法論であると考えられていることがしばしばあります。これは「仕事効率化」という言葉に隠れた初歩的なブービートラップです。
タスク管理において「より多く、より速く」は重要ではない
「より多く、より速く」タスクを実行するための手法はごく一部であり、表面的なものにすぎません。多くの仕事において目の前の仕事をより多く、より速く実行することは、いまやさほど重要なことではなくなったからです。
仕事をより多くより速く実行する方法というのは、目の前の仕事がすでに十分に厳選されたものであり、いますぐ実行することが明らかに正しい場合でのみ重要です。
多くの仕事において実態はそうなっていません。目の前の仕事をやるべきかどうかは自明ではありません。その仕事を本当にやるべきかどうかすら怪しいものです。
ただやみくもにより多く、より速くタスクを実行しても、無意味どころか有害なことすらあるのが実情です。
知識労働において「HOW」の重要性は低い
単純作業の連続である場合はHOW(どのように)の重要性が高く「より多く、より速く」が何よりも重要でした。それが生産性に直結していたからです。
知識労働においてはHOWの重要性が低いです。そして、いまやほとんどの人が知識労働を求められています。
かつて知識労働は医者や教師、研究者など一部の職務についている人に特別求められることでした。
知識労働とは、肉体ではなく自らの頭脳と知識を駆使して課題に対する解決を図る仕事です。場合によっては課題自体を自分で見つけなければならないことも少なくありません。
知識労働では、「より多く、より速く」は通用しません。
このような性質の仕事において、HOWは重要性が低いです。5W1Hで言うなら、WHY、WHAT、WHENが圧倒的に重要です。なぜやるのか? なにをやるのか? なにを優先するのか? これらを吟味したうえではじめてHOWが必要となります。
ここで、知識労働が単なる情報収集と大きく異なる点には注意が必要です。むしろ、まったく逆のアプローチとすら言えます。
考えることとは、情報を解釈して自分なりの判断を下すことです。情報収集においては「広がり」が重要ですが、知識労働は「絞り込み」が重要です。
必要な情報を吟味し、自分なりの解釈によって仮説を立て、正しい判断をもとに仕事を取捨選択しなければなりません。
このあたりのことは次の記事も参考にしてください。
「より正しく、より深く」へシフトする
「より多く、より速く」が通用しなくなったとして、いま我々のタスク管理に求められているものはなんでしょうか。
それを私は「より正しく、より深く」と表現します。
正しい対象を選び取り、それを質の深い仕事で形にしていく方法です。世の中には数々のタスク管理メソッドがありますが、「より正しく、より深く」仕事をするための手法こそ真に有効なタスク管理と言えます。
貴下の従順なる下僕 松崎より