このページでは、ジェームズ・クリアー著の「複利で伸びる1つの習慣(原題:Atomic Habits)」について、まとめていきます。
随所に他の習慣化本のエッセンスを取り入れながら横断的に解説しつつ、最後に読んでみた感想も紹介できればと思います。
目次
本書の鍵「習慣によってアイデンティティーを変える」
筆者は、習慣化を身につけるためには「アイデンティティーを形成すること」がもっとも重要と述べています。
アイデンティティーとは、自分自身に対する認識のことを指します。たとえば「私はランナーである」や「私は読書家である」のような自己認識です。
ここで、習慣化を身につけるためにアイデンティティーを形成することが重要であるのはなぜでしょうか?
これを重視することはすなわち、「読書を習慣化しよう」という目標ではなく、「私は読書家である」というアイデンティティーを持つことを目標にしよう、ということです。
これは、自らに対する認識=アイデンティティーが変化することによって、人はそれに見合う行動を取りやすくなるからです。
たとえば、「私は誠実な人間である」というアイデンティティーがある人は、どんなに腹立たしいことがあっても、自分の人格と一致していない行動(急に怒鳴る、殴るなど)は、滅多に取らないことでしょう。
同様に「私はランナーである」というアイデンティティーを持っている人を思い浮かべてみてください。
おそらく走ることが苦であるようには見えず、自然と走り出してしまっている(=習慣になっている)様子が想像できるかと思います。
このように、アイデンティティーが身についている人にとっては、そのタイプの人らしく、ただ行動しているだけです。ここに努力は必要ありません。
アイデンティティーの身につけ方
ここで「習慣化のために”アイデンティティー”を身につければいいことはわかった。では具体的にどうやって身につければいいの?」という疑問に対する回答をします。
これは鶏と卵の話になのですが、習慣としてその行動を繰り返すことによって、自分の中にアイデンティティーが芽生えていきます。
つまり、習慣化のためにはアイデンティティーを身につければよいが、アイデンティティーを身につけるためには習慣化をする必要がある。
「じゃあどちらから先に身につければいいの……?」という話になってしまいますよね。
この壁に立ち向かうため、ジェームズ・クリアー式の習慣化メソッドが登場します。
ここからは習慣化メソッドについて、詳しく見ていきましょう。
習慣を構成する4つの要素
ジェームズ・クリアーは、習慣ループを4つ要素から成るものと定義しました。それが「きっかけ → 欲求 → 反応 → 報酬」です。
ちなみに、チャールズ・デュヒッグ著の「習慣の力」では、習慣ループは「きっかけ → ルーチン → 報酬」という3つの要素から成るものとし、そのループを回す根源には「欲求」があるという考え方をしています。
両者ともかなり近い考え方ですね。
1. きっかけ
習慣は常にきっかけから始まります。
良い習慣を身に着けようと思ったとき、まずきっかけを「ハッキリさせる」ことが重要です。
きっかけをハッキリさせる最善の方法が、ご存知 “実行意図” です。
実行意図とは、「ある行動をいつ・どこで行うか」をあらかじめ計画しておくことを指します。
よって、新しく習慣を立ち上げる場合は、実行する時間と場所をあらかじめ決めておきましょう。
具体的としては、「わたしは21時に、作業場の椅子に座って、10分間英語を勉強する」のようなイメージです。21時にアラームをかけて、よりきっかけをハッキリさせるのも良いかもしれません。
2. 欲求
我々を行動する気にさせるのは、報酬となる経験への期待です。これを欲求と呼びます。
ここで紹介する2.の欲求は「報酬の予測」であり、後述する4.の報酬は「報酬の実現」と区別することができます。
習慣を構築する際、予測される報酬(欲求)が弱いと、たとえきっかけが存在していたとしても、行動に移す気になれません。
よって、欲求は「魅力的にする」ことを意識しましょう。
本書では、欲求を魅力的にする方法として、「習慣の抱合せ」を紹介しています。
これは「習慣化したい行動」と「やりたい行動」をセットにする方法です。
たとえば、習慣化したい筋トレの後に、Netflixでアニメを一話見る、などが考えられるでしょう。
3. 反応
反応とは、報酬を獲得するための行動のことです。
行動は「易しくする」ことが、習慣を形成する上で役に立ちます。
易しくするために一つおすすめの方法は、環境を準備することです。
よくある例として、ジョギングを習慣にするために、「ウェアをずっと着ておく」や「ランニングシューズを玄関に出しっぱなしにしておく」などが挙げられるでしょう。
4. 報酬
我々は、報酬を得たいがために行動します。
報酬が満足できるものだと、人は行動を繰り返す確率を高めます。逆に報酬が満足できないものだと、その行動を繰り返す確率が下がります。シンプルですね。
よって、習慣化したい行動に関しては、報酬を「満足できるものにする」ことを意識しましょう。
ここで、報酬には「即時報酬」と「遅延報酬」があります。
より強力なのは、即時報酬です。
マクドナルドを例に挙げましょう。健康に悪いと分かりつつも、ついマクドナルドを食べてしまうのは、「食べないことにより健康を守れる」遅延報酬よりも、「食べることによりその瞬間が満たされる」即時報酬のほうが強いからです。
なので、意識的に習慣を構築するのであれば、「即時報酬をいかに強化するか」に主眼を置くのがよいでしょう。
報酬に関してはいろんな方法論があるので、ここではシンプルなもの一つに絞って紹介します。
それが本書でも紹介されている「習慣トラッカー」です。
このように、カレンダー形式でチェックマークを刻んでいくものが、習慣トラッカーと呼ばれています。
連続でチェックマークが刻まれるだけの単純なものですが、十分に報酬となり得ます。
「ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣(Atomic Habits)」まとめ
上記をまとめると、習慣をより効果的に身につけるためには、習慣を構成するそれぞれの要素を強化する必要があります。
- きっかけは、ハッキリさせる
- 欲求は、魅力的にする
- 反応は、易しくする
- 報酬は、満足できるものにする
そして習慣が身につき、ある行動が繰り返されることで、自分自身のアイデンティティーが変化していきます。
アイデンティティーが変化すると、そのタイプの人らしくただ行動するだけでいいので、より行動を実行することが容易になるでしょう。
感想
ここからは感想です。
全体的にすごく分かりやすいなと思いました。
他の習慣化本と比べても、個人の習慣を身につけるメソッドとしては、かなり完成されている気がします。
「きっかけはハッキリさせる」「反応は易しくする」など、具体的なアクションに繋げやすい点も好印象です。
また、TaskChute Cloudとつながる点も多く見受けられました。
本書のなかには、きっかけをハッキリさせるために、「自分が行っている習慣を一つひとつ指差し確認のごとくチェックして、リストアップしていくことから習慣の変容は始まります」といった内容が書かれています。
これは「行動ログをもとに行動を改善していく」というタスクシュートの考え方と合致しています。
そして習慣トラッカーも紹介されていて、これはTaskChute Cloudの機能としてすでに実装されているので、相性が良いなと思いました。
本書の内容をTaskChute Cloudを使って実験できそうなので、個人的には嬉しいことです。